健康のひけつ
平均寿命よりも余命、それより健康寿命!

長寿の国ならではの悩ましいことは、健康かどうかでしょうか。平均寿命が延びることはうれしいことだけれど、私たちにある余命を健康で過ごせるかがだいじ。

日本人の「平均寿命」をご存知でしょうか。厚生労働省の2014年の発表では、女性86.83歳、男性80.50歳で、ともに過去最高を更新したとのことです。女性は3年連続世界一、男性は前年の4位から3位となり、日本は世界有数の長寿国なのです。

平均寿命より平均余命

平均寿命とは、発表されたその年に誕生した人、つまり0歳の「平均余命」のことで、平均寿命に達したらバタバタと亡くなってしまうというものではありません。ある年齢の人々が、“その後何年生きられるか”という平均余命(へいきんよめい/へいきんよみょう)は、表1のように公表されています。例えば、男性80歳の平均余命は8.79年です。

表1:主な年齢の平均余命(単位:年)
年齢
0歳 80.50 86.83
10 70.77 77.09
20 60.90 67.16
30 51.21 57.32
40 41.57 47.55
50 32.18 37.96
60 23.36 28.68
70 15.49 19.81
80 8.79 11.71
90 4.35 5.66

健康寿命を延ばしたい

一方、介護が必要だったり、日常生活に支障が出る病気にかかったりする期間を除いて、自立して過ごせる期間、それが「健康寿命」です。健康寿命は、単に寿命を延ばすのではなく、健康に長生きすることを重視するという考え方に基づいて、世界保健機関(WHO)によって2000年に提唱されました。

ワシントン大学の研究報告によると、2013年の健康寿命はなんと日本が男女ともに世界第1位です。女性75.56歳、男性71.11歳だそうです。

おや、気づきましたか?平均寿命と健康寿命との差に。女性約11年、男性9年の期間が介護を受ける期間ということになります。

先ごろ、<一億総活躍社会>なることが政府より提唱されました。定年を迎えても“え~、未だ働けというのか”という声も聞こえてくるようです。そうでなくても健康寿命の延伸は重要な課題です。

病気になってから治すのではなく、病気にならないようにする「未病対策」が、長寿国日本では今後ますます重要になるのは間違いないはず。国民の一人一人が、介護の原因をひとつでも、少しでも減らす努力が、きっとあとで自分自身へのご褒美となることでしょう。先ずは、健診を受けて健康づくりをしようではありませんか。

更新日:
2016年6月1日
著者:
明治安田新宿健診センター 所長 医師 内田 賢
元記事名:
医師のコラム
第5回:平均寿命よりも余命、それより健康寿命!