健康のひけつ
胸痛を見極めるポイント

中高年になると、今まで一度も胸痛を感じたことがないという人は、あまりいないかもしれません。胸痛といっても様々で、必ずしも重大な病気があるとは限りません。ここでは、胸痛の原因となる疾患に対する簡単な鑑別ポイントをご紹介しましょう。

健診で相談を受けることで最も多いのが、“チクチクする”や“キューとなる”といった鋭い痛みを伴うものです。痛みの範囲は指で示せるほどに狭く、時間は数秒から数十秒程度で治まります。これは「肋間神経痛」などの神経や筋肉の痛みと思われます。

次に“胸のやける感じ”とか“締めつけ感”があります。水を飲むと良くなるものは「逆流性食道炎」が考えられます。

突然の持続する胸痛(背部痛)は「解離大動脈瘤」が考えられます。今まで経験したことのないような“激烈で耐え難い痛み”なので、失神することもあります。

その他にも気胸や肺炎が原因として挙げられますが、胸痛よりも咳や呼吸苦などの症状が主体になります。

では、通勤時などに駅の階段を急いで上がろうとしたときに“胸の(広い範囲)圧迫感”や“息切れ”があり、休むと改善するというケースはいかがでしょうか?運動不足のせいと思いがちですが「労作性狭心症」かもしれません。この場合、症状は必ずしも胸痛だけとは限らず、肩や歯の痛みと感じる人もいます。特に、メタボの人や喫煙者は要注意です。

狭心症は血管が狭くなって、一過性に心筋に十分な血液が送られなくなることです。安静状態で検査した心電図だけでははっきり判断できないことが多いので、循環器科に相談して運動負荷心電図や冠動脈CT検査を受けることをおすすめします。最近症状が出て“増悪”していくときや“冷汗”を伴う場合は、血管が詰まっている可能性もありますので早々に受診した方がいいです。ただし糖尿病の方は痛みを感じにくく自覚症状がはっきりしないこともあるので、主治医による合併症管理が重要になります。

心配な胸痛のポイント

  • 激烈なもの
  • 持続するもの
  • 一回は数分程度だが、繰り返し起こり、増悪するもの
  • 冷汗を伴うもの

一つでも当てはまる場合は、治療が必要な疾患が隠れているかもしれません。

更新日:
2016年2月15日
著者:
新宿健診センター 副所長 中田 希代子
元記事名:
医師のコラム
第4回:胸痛を見極めるポイント