健康のひけつ
COPD(慢性閉塞性肺疾患)は生活習慣病です

風邪でもないのに咳や痰が長く続く、最近階段を昇ると息切れするようになった、このような症状がある場合、特に愛煙家の方は年令のせいばかりとは言えません。COPDという病気かもしれません。

COPDは慢性気管支炎、肺気腫と呼ばれてきた病気を総称したものです。主にたばこの煙などの有害物質を長期間にわたって吸入する環境にいることで肺に炎症をおこす疾患であり、喫煙習慣のある中高年に多く発症する生活習慣病といえます。

NICEスタディ(2001年)によると、40歳以上の日本人の有病率は8.6%、患者数は530万人と推定されています。ただし実際に病院で診断された患者数は22万人で、500万人以上の人は気づいていない、あるいは診断されていないことになります。

COPDを放っておくと、徐々に気管支や肺胞の炎症、破壊が進み、咳や痰、また労作時の息切れが生じてきます。このような気道の変化は進行性で、治療によって元通りに戻すことはできないのです。ただし、早めに発見し管理することで進行を遅くすることは可能です。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の研究による推定患者数
厚生労働省健康局生活習慣病対策室「慢性閉塞性肺疾患(COPD)の現状について」より

肺機能検査で一秒率を測って、COPDを早期発見

COPDの診断には肺機能の閉塞性障害の有無が重要で、スパイロメトリーといわれる肺機能検査が必要です。一秒率(一秒量÷努力性肺活量)(※1)が70%未満(正確には気管支拡張剤の吸入後の値)の場合が、閉塞性障害の目安になります。喘息などの閉塞性障害をきたす他の疾患がなければCOPDと診断されます。

※1一秒量:思い切り息を吐き出した時の、はじめの1秒間に吐いた量
努力性肺活量:息を最大に吸って、強制的に最大に吐き出した量


呼吸機能の年齢変化の模式図
日本呼吸器学会ホームページより

※2たばこ感受性がない:個人によって喫煙者でもたばこの影響が少ない人

COPDの治療目標は、病気の進行を遅らせることです。症状や生活の質、生命予後を改善することになります。肺機能は健康な方でも年令とともに徐々に低下しますが、喫煙を続けていると、肺機能の悪化が加速してしまいます。禁煙はCOPD治療の基本です。

長年喫煙されている方は、ぜひ肺機能検査を受けましょう。COPDが早く診断されれば、早めに治療ができ、ひいては健康寿命をより長く保つことが期待できます。

更新日:
2015年11月10日
著者:
明治安田新宿健診センター 医師 山下陽子
元記事名:
医師のコラム
第3回:COPD(慢性閉塞性肺疾患)は生活習慣病です